熱血弁護士・堀内恭彦の一筆両断

条例でヘイトスピーチに「罰則」 加速する危険度

 定義が曖昧で不明確であれば、「この言い方や表現だと罰せられるのではな

いか?」との不安から、国民の自由な言論や情報発信は萎縮してしまう。また、「反日」を掲げる近隣国の「本邦外出身者」に関する歴史的事実を指摘し正当な批判や論評をすることも、「差別的意識を助長するヘイトスピーチだ!」と非難されてしまう危険性がある。

 表現の自由がいったん制限され萎縮してしまうと、表現や情報発信自体ができなくなり、国民の力でこれを回復することは極めて困難となる。だからこそ、「表現の自由」の制約は「必要最小限度」でなければならないのである。他人を傷つける「憎悪表現」が許されないことは言うまでもないが、現行の民法や刑法で規制することが可能なのであるから、表現の自由を制限してまで、あえて新たな立法措置をする必要性はない。

 また、ヘイトスピーチの認定は、市長が委嘱する5人以内の学識経験者で構成される「差別防止対策等審査会」の意見をもとに行われる。しかし、裁判所のように事実認定のプロでもない密室の審査会によって「ヘイトスピーチ」と認定され「差別主義者」として公表されてしまうことは、表現者にとっては回復し難いダメージとなる。

 私たちは「ヘイトスピーチ」というレッテル張りに惑わされず、条例案の具体的内容と危険性をしっかりと把握し、「表現の自由」が侵害されることの危機意識を共有しなければならない。

 川崎市は12月議会で条例案を提出し、来年7月の全面施行を目指している。今後、ますます、全国各地でこのような罰則付きの条例制定の流れが加速していくだろう。「一地方の話だから、条例だから」と楽観していると、取り返しのつかないことになる。

【プロフィル】堀内恭彦(ほりうち・やすひこ)

 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。九州ラグビーフットボール協会理事(スポーツ・インテグリティ担当)、元九州大学ラグビー部監督。

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