虎番疾風録

「死に体」南海に牙をむかれ… 其の参65

虎番疾風録 其の参64

足をすくわれる―とは、このことをいうのだろう。10月5日、南海とのダブルヘッダーに臨んだ近鉄ナインの心は、目の前の南海戦ではなく、7日に迫った日本ハムとの〝首位決戦〟に飛んでいた。

それは記者たちも同じだ。南海はこの日の試合が終われば、広瀬監督が川勝オーナーへ「辞任」を申し出る予定になっていた。相撲でいえばすでに〝死に体〟。誰もが近鉄の「連勝」を予想していた。ところが、第1試合で先発の村田がドカベン香川に、二回に7号3ラン、四回にも8号2ランを打たれ、2―11で大敗を喫してしまったのだ。そして、第2試合―。

◇10月5日 第2試合 日生球場

南海 000 102 025=10

近鉄 400 100 000=5

(勝)金城6勝4敗13S (敗)柳田13勝9敗6S (本)マニエル(47)(村上)、羽田(30)(村上)、吹石⑫(平沢)、河埜⑨⑩(柳田)

先手を取ったのは近鉄だった。一回、1死一、二塁でマニエルが左翼へ47号3ラン。続く羽田も左中間場外へ30号本塁打を放ち4点を先行した。投げては先発の柳田が五回までに10三振を奪う力投。完全に近鉄ペースだった。ところが後半になって、柳田の球威が急に落ちた。

連投の疲れと飛ばし過ぎた反動だった。八回に河埜の9号2ランで同点にされると、九回は無死満塁から小田に勝ち越しの中犠飛。さらに新井の中前タイムリー。河埜に2打席連続ホームランを打たれて万事休す。まさかの連敗。というよりこの期に及んでなぜ、南海は…。「いつもこんな試合をしていたら南海は優勝していたよ」とマニエルも両手を広げて首をかしげた。

実は第2試合の前、広瀬監督はロッカールームに選手たちを集め「この試合が終われば、私は辞任する。これまでありがとう」とあいさつ。「最後の試合はどうしても勝ちたい。勝たせてくれ」と頭を下げていたのである。戦意喪失どころか、南海は燃えていた。まさに〝油断大敵〟だった。

この日、阪急戦に勝利した日本ハムの優勝マジックが「1」となり、7日の近鉄戦で勝つか引き分けで後期優勝決定。近鉄は残り3試合「全勝」するしかなくなった。崖っぷちに追い込まれた西本近鉄。「あと3つ。気楽に行くよ」。通路を行く西本監督の肩が少し落ちたように見えた。(敬称略)

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