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少女虐待の米富豪 ユニークな教師から転身 生命科学に「異様な関心」

科学に関心

政財界の大物たちと華麗な交遊関係を築いていたエプスタイン被告は、科学研究の世界にも人脈を広げていた。

名門の米マサチューセッツ工科大(MIT)は、過去20年にわたって同大メディアラボと、量子情報の研究で有名なセス・ロイド教授が計約80万ドルの資金提供を被告から受けていたと公表。IT分野の専門家として知られるメディアラボの伊藤穣一所長は、「判断の誤りについて全責任を負い、被害者の方に深く陳謝する」と謝罪に追い込まれた。

友人を介して被告と知り合い、研究室に招いたり被告の居宅を訪れたりしたが、性的虐待行為については知らなかったという。 伊藤氏は、ラボへの資金提供については人身取引の被害者を支援する非営利団体へ同額を寄付するとともに、自らが運営するIT企業への投資ファンドに提供されていた資金は全額返還するとしたが、批判が収まらずMITは9月7日に同氏が所長と教授職を辞任すると発表するに至った。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、エプスタイン被告は、「車いすの天才科学者」と呼ばれた英理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士(故人)や、陽子や中性子を構成する素粒子を提唱し、ノーベル物理学賞受賞者で「クォークの父」と呼ばれたマレー・ゲルマン氏(同)とも交遊関係があったという。

「死んでも苦しめる」

科学に対して広く理解を持っていたとみられるエプスタイン被告だが、その関心内容は異様だったようだ。

ニューヨーク・タイムズによると、被告は「誰かにみられている」という感情を引き起こす粒子を発見する研究に資金を出すと話していたほか、死後再び生き返ることができるとする「人体冷凍保存」の技術に強い関心を抱き、自身の頭部と性器を冷凍保存する希望を語っていた。

遺伝子改変などで自らのDNAを永久に残すことへの興味を隠そうとせず、ニューメキシコの居宅で女性20人に子供を妊娠させる計画も明かしていたという。

科学者へのアプローチは、「永遠の生」を得ることと関わりがあったのか。被告の口から明らかにされないまま、死亡に伴って刑事訴追は終了する。

8月27日には虐待を受けた被害女性十数人による証言が裁判所で行われ、一人は悲痛に訴えた。

「死んでもなお、エプスタイン(被告)は私を苦しめる」

永遠に…。これがエプスタイン被告の願いだったのだとしたら、あまりに残酷だ。(ワシントン 住井亨介)

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