リニア水問題、JR東海が詳細回答を静岡県に送付

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題に関し、静岡県は9日、中間意見書に対するJR東海の回答を公表した。リスク管理の考え方やトンネル湧水を大井川に戻す方法、突発湧水への対応、水温や水質の管理などについて詳細に踏み込んだ内容になっている。県はこの回答を踏まえて12、13の両日に県中央新幹線環境保全連絡会議を開き、国の担当者の同席の下で専門家である委員とJR側が内容について協議する。

 今回の回答は、同社が7月に県に提出済みの「回答案」を大幅に加筆修正したもの。回答案はわずか14ページで文章のみだったが、今回の回答は図表を多用して約100ページに及ぶ。これまでの専門部会で委員や県、利水者側から出された意見を取り入れ、「専門用語を多用せずイメージ図を使うなど、県民に理解できるように」という県の要望を反映してまとめられたとみられる。

 回答の中で同社は、利水者側が問題視する工事期間中のトンネル湧水の他県への流出について、先進坑からの流出量は山梨県側へ毎秒最大150リットル(平均80リットル)、長野県側へは同最大7リットル(平均4リットル)との予測を公表した。吹きつけコンクリート施工などの対策を取れば流出量は低減できるという。

 その上で同社は回答に「県境付近の湧水については、引き続き検討し、静岡県や大井川利水関係協議会などと意見交換する」と、県や利水者側と協議を続けることを明記。「できるだけ早く先進坑を両県とつなぐことを優先し、ポンプを早期に整備して、湧水が流出する期間を短くする」と従来の対策を強調した。

 県の担当者は今回の回答を「分かりやすくなっている」と評価したものの、「県外に流出する湧水について、本当に戻す方法がないのかきっちり詰めなければならない。引き続きJRとの対話を進めたい」と、これまでと同様の対応をとる方針を明らかにした。

 一方のJR東海は「これまで同様、大井川の水量・水質に関わる課題などに丁寧に対応していくので、ご理解いただき、トンネル本体工事の早期着手につながることを期待している」とコメントした。

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