国民の自衛官~横顔

(1)震災の教訓、後進に伝える 陸自東北方面ヘリコプター隊 馬場正幸3等陸佐

「第17回国民の自衛官」を受賞した東北方面航空隊東北方面ヘリコプター隊第1飛行隊の馬場正幸隊長(54)=8日、仙台市若林区(塔野岡剛撮影)
「第17回国民の自衛官」を受賞した東北方面航空隊東北方面ヘリコプター隊第1飛行隊の馬場正幸隊長(54)=8日、仙台市若林区(塔野岡剛撮影)

 陸上自衛隊に入隊以来、周囲から言い聞かされてきた自衛官としての心構えに「使命の自覚」がある。それは、自らに課せられた任務を考え、明らかにした上で目の前の任務を遂行することだ。「入隊して35年かかって、その真意がわかるようになってきた」と笑みを浮かべる。

 福島県出身。小学生から高校生まで剣道に打ち込んだ。「体を鍛えて規則正しい生活を送りたい」と入隊し、平成元年には念願だったパイロット試験に合格。幾多の危険が伴う空の任務を全うしてきた。

 23年3月11日、長男の中学校の卒業式出席のために休暇を取っていたときに東日本大震災が発生した。霞目(かすみのめ)駐屯地(仙台市)へ急いで向かい、夕方には屋上に多数の避難者がいる荒浜小学校(同)へ向かった。ヘリで現場へ向かう途中、民家の屋根の上で助けを待つ人々の姿が見えた。「荒浜小学校では複数のヘリが救助に当たっている。こちらの救助に当たった方がよいと考えた」。上官に報告し、救助活動に急遽当たった。

 震災で頭から離れないのは、高齢女性の救助に当たった際のことだ。「ほかに要救助者はいませんか」と問いかけると、高齢女性は「(周りは)もう死んでしまっている」と答えた。その表情や声が、今も脳裏に焼き付いている。

 震災当時の救助活動を、日々の任務を通して後進に伝えていくことが、今の自分に課せられた「使命」だと自覚している。(塔野岡剛)

 災害派遣や国際貢献などで功績のあった自衛官らを顕彰する「第17回国民の自衛官」に選ばれた10人と1部隊の横顔を紹介する。表彰式は10月8日午後2時から、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ケ谷で行われる。

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