ソフトバンクが携帯電話端末を最大半額近く割り引く購入補助策を維持するのは、米アップルの「iPhone」など高額端末を購入しやすくするのが狙いだ。法改正への対応で自社の回線の継続利用という条件を取り払ったが、一方でソフトバンクが指定する新機種の購入という新たな条件が設定されるほか、端末は100日間ソフトバンク以外利用できない「SIMロック」がかかっているなど、顧客への縛りは残る。
「選択肢がなければ高価な端末は買えなくなる」。ソフトバンクの榛葉淳副社長は、近く発売されるiPhoneの新機種や第5世代(5G)移動通信システム対応機種などの高額端末には、大幅な販売補助策が必要と強調した。
携帯料金をめぐっては、10月に端末代金と通信料金のセット割引を禁止する改正電気通信事業法が施行され、携帯大手は端末を大幅に値引きして通信料金で稼ぐ手法がふさがれる。また、端末値引きも2万円までに制限されるため、利用者の負担増が想定される高額端末の購入補助策をどう講じるかが課題だった。
もっとも、新ルールでの値引き上限2万円は回線と端末がセットで販売される場合だけに適用され、ソフトバンクのようにスマホのみの販売はないという。総務省幹部は「端末単体で売るなら自由に競争していい」とソフトバンクの手法を肯定した上で、「あとは他社がどう動き、競争が促進されるかを期待している」と語った。
総務省は、法改正の考え方について「端末の大幅値引きなどにより、事業者が利用者を誘引するモデルを2年をめどに事実上根絶する」としている。だが、今回は通信と端末を分離してさえすれば、端末を大幅に値引きしてもいいとの解釈だ。これが過度な顧客の囲い込みを是正するという法改正の趣旨に沿っているかには不透明感が残る。(万福博之、高木克聡)