横浜市内で5日昼前に発生した京浜急行線の踏切事故で1人が死亡、30人以上が負傷した。大破した車両とトラックが線路をふさぎ、復旧に多大な時間を要して乗客の足は大きく乱れた。
事故を防ぐことはできなかったのか。再発防止には何が必要なのか。
事故は、13トンのトラックが線路沿いの細い道から踏切を右折しようとして曲がりきれず、立ち往生していたところに下り快特列車が衝突した。
大きな過失はトラックにある。踏切進入の前に何度も前進後退を繰り返して切り返し、踏切内で数十秒間にわたって立ち往生していた。道を間違えた可能性もあり、神奈川県警は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、運転手が勤務していた千葉県香取市の運送会社を家宅捜索し、運転手の勤務状況などを調べている。
一方で、京急線は衝突を避けることはできなかったのか。
京急によると、事故があった踏切には「障害物検知装置」が設置され、事故時には作動していた。装置が障害物を検知すると、踏切から10メートル、130メートル、340メートルの発光信号機が点滅する。
340メートルの信号機は600メートルの位置から目視することができ、ここでブレーキをかければ踏切までに止まれる計算なのだという。
だが運転士は「信号に気づいて緊急ブレーキをかけたが間に合わなかった」と話している。列車は相当の高速でトラックと衝突しており、「踏切までに止まれる計算」とする京急側の説明との乖離(かいり)はあまりに大きい。
運転士がどの地点で信号を確認したのか、ブレーキによる減速はどの程度あったのか。詳細な検証が求められる。仮に装置が正常に作動し、運転士の行動に問題がなかったとすれば、この装置の存在は無意味である。
検知装置と自動列車制御装置(ATC)を連動させるシステムの導入も検討すべきだろう。
重大な踏切事故は後を絶たず、これを根絶するには高架化などで踏切そのものをなくすしかない。だが用地取得などが進まず、容易には進んでいないのが現状だ。
京急の事故は、狭い側道から大型トラックが踏切に進入した運転に問題があった。踏切周辺の細い道路の大型車進入禁止を増やし、その表示を明確にするなど、周辺環境の整備も欠かせない。