紀伊半島豪雨8年 災害に備え「2地域居住」進む 奈良・十津川村

高齢者向け村営住宅が並ぶ「高森のいえ」。村唯一の特別養護老人ホーム「高森の郷」(左奥)に隣接している=奈良県十津川村
高齢者向け村営住宅が並ぶ「高森のいえ」。村唯一の特別養護老人ホーム「高森の郷」(左奥)に隣接している=奈良県十津川村

 平成23年9月の紀伊半島豪雨から8年。死者・行方不明者13人を出した奈良県十津川村では、「2地域居住」という独自の生活スタイルが生まれている。住み慣れたわが家を残しつつ、災害リスクの少ない村営住宅に村内移住し、高齢者らが身を寄せ合って暮らす試みだ。

 紀伊半島豪雨で、十津川村では全壊18棟、半壊30棟の家屋被害があった。「こんな時に十津川の木を使わんでどうする」。更谷慈禧(よしき)村長の肝いりで、十津川産の木材を使い、地元大工が手がけた木造の仮設住宅30戸が建設された。

 「みんなで一緒に楽しく暮らせた」。こんな声が多数寄せられたことから、村は地域住民の新たな暮らしを模索。平成29年3月に完成したのが、高齢者向け村営住宅を中心とする拠点集落「高森のいえ」だ。

 高森のいえが建設されたのは、村唯一の特別養護老人ホーム「高森の郷」の隣接地。立地は自然災害によるリスクが比較的少なく、全5棟に定員いっぱいの14人が入居している。高森の郷からのヘルパー派遣や医師の出張診療もあり、防災と高齢者福祉の双方の観点を兼ね備えた住まいとなっている。

 村福祉事務所の阪本靖子所長は「先月中旬、台風10号が接近したときも避難の必要はなく、畑を耕しに自宅に戻る人も。最期まで村内で暮らしてもらえるモデルになる」と話す。

 村は村内全7地区で、空き家も活用しながら同様の拠点集落づくりを進める方針。第2弾として、村立西川中学校の寮だった建物を活用した「西川のいえ」の基本設計に着手している。

会員限定記事会員サービス詳細