経済インサイド

増加する「プチエンゼル」 ベンチャー支える小さな投資家たち

株主向け事業説明会で説明するコトブキメディカルの高山成一郎代表取締役=7月31日、東京・八重洲
株主向け事業説明会で説明するコトブキメディカルの高山成一郎代表取締役=7月31日、東京・八重洲

 創業間もないベンチャー企業が苦労する資金調達を助けるエンゼル投資家は、日本で育たないといわれてきた。しかし、個人がインターネットを通じ少額でも非上場企業の株式を取得できる株式投資型クラウドファンディング(CF)の登場で変わろうとしている。投資額が1社当たり年間50万円までと限られるためプチエンゼルと呼ばれる投資家層で、投資先は株式投資型CFの運営会社の審査を通過している安心感からじわじわと増えている。

 投資目的はIPO(新規株式公開)などによる売却益を得ることだが、それだけではない。「子育てと同じ。初期段階から成長を見守れるから」とプチエンゼルの一人は説く。経営ビジョンに賛同できるベンチャーには多くのプチエンゼルが出資し、1億円近い資金を集めるベンチャーも出てきた。

 「数分で資金調達額の下限(2500万円)に達し、その後も金額が積み上がっていく。高揚感もやがてうせ、その夜は祝杯をあげても酔えなかった」

 手術トレーニング製品を開発するKOTOBUKI Medeical(コトブキメディカル、埼玉県八潮市)は6月1日、日本クラウドキャピタル(JCC、東京都品川区)が運営する株式投資型CFサービス「ファンディーノ」を通じて591人から8930万円を集めた。このときの心境を高山成一郎代表取締役はこう語った。

 創業は平成30年11月。医療系ベンチャーとして注目度は高かったが、赤字が続く。「ITでもAI(人工知能)でもない町工場が新製品を開発したといっても理解してくれるのか不安だった」(高山氏)が杞憂に終わった。プチエンゼルの一人は「小さな会社の大きな挑戦。子供の成長を見る感覚がほしかった」と投資理由を語った。

 プチエンゼルの一人で、システムコンサルティング会社を経営する60代男性は「社会を変える技術を持つベンチャーに期待して資金面で支援している。投資した以上は成功してほしいが戻ってこないリスクも承知している」という。

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