朝晴れエッセー

父の柔道着・9月1日

私の父は今年82歳。そして柔道7段で45年にわたり地元で柔道を教えていた。私の子供に「おじいちゃんはすごく柔道に熱心で練習は厳しく、怖くて怖くて仕方がなかった」と言っても、孫には好々爺のように優しく接する祖父の姿しか知らない私の子供には、その言葉は全く信じてもらえない。

私が今年の冬兵庫の実家に帰り押入れを整理していると偶然父の柔道着を見つけた。父に「いつまで子供たちに柔道教えていたの?」と聞くと「74歳くらいまでかな」との返事。よくそんな年まで柔道を教えていたなと感心した。

そういえば私が小学生のころだが、町役場関連の人と電話で激しくやりとりする父の会話を聞いたことがある。「わしは柔道を一生懸命やる子がかわいくて仕方がない。この子たちのためにも道場を守り柔道を教えるんだ」とその時の状況は分からなかったものの、柔道を教えることへの信念を貫こうとする父の姿勢は子供ながらに心に響いた記憶が今でも残っている。柔道の厳しい練習が人を育て社会で生きていく術を教えると常に言っていた。

私が見つけた父の柔道着は高段者であることが分かる赤白帯で結ばれていた。それは父が積んできた柔道への一つの証。そして自分が歩んできた柔道の指導者としての足跡。

今回偶然見つけた色あせた父の柔道着。見かけはそうであっても、父の教え子に対する想い、そして柔道にかける情熱は今でも少しも色あせていない。そう思った。

岸野 公勇(こうゆう) 50 青森県八戸市