朝晴れエッセー

S子のハガキ・8月31日

近頃、手書きのハガキを見なくなった。メールやSNSが主流になったせいなのだろう。そういう私も、ハガキを出すのは年賀状だけになった。それも、印刷である。

そんなとき、1枚のハガキが届いた。差出人を見て驚いた。8歳になる妹の孫のS子からだった。S子は先天性弾発で指が曲がらない。ハガキには、濃い鉛筆で「しょちゅうおみまいもうしあげます。おじさん、げんきですか。わたしは、げんきです」。すべて、平仮名で書いてある。どんな気持ちで一字一字を書いたのだろう。

すぐ、妹に電話した。

「施設の先生の指導で、手に鉛筆を包帯で巻いて、ようやく字が書けるようになったの。書いては消しの繰り返しで3日もかかったのよ。昔、あなたに色鉛筆をもらったことがうれしくて、最初に出すのは、あなたと決めていたようなの」。妹は、涙声になっていた。

「Sちゃん、字が書けるようになってよかったね。私もうれしいよ。字が力強くて素晴らしい。苦労して書いたことが、黒くなった消しゴムの跡でわかるよ。こんな心のこもった暑中見舞いのハガキをもらったのは初めてだ。私も返事を書くからよろしく言ってね」

返事を何年かぶりに万年筆を使って書いてみたが、うまく書けない。彼女のように一心で書く字には、悔しいがかなわない。

一生懸命さが伝わってくるS子のハガキは、暑い夏をすがすがしい気分にしてくれた。

安部 直(なおし) 74 埼玉県狭山市