朝晴れエッセー

梅干し作り・8月30日

「梅の実いる? 手入れをしていないからあまりきれいではないけれどね」と友達が聞いてきた。この数年、梅干し作りには興味を持っていたが、大変そうだしうまくできないかもとスーパーに並ぶ黄色みがかった梅を横目に見ながら通り過ぎていた。何より欲しければ実家の母が作ったのをもらうことができたから尚更だ。

このタイミングを逃したら一生梅を漬けることはないかもしれないな。母も高齢、「そろそろあんたの番やで、頑張りや」と、言われたような気がして心の手が私の背中を勢いよくドンと押した。

母の説明を聞きながら、その都度状態を写真に撮り、携帯で送り指示を仰ぎながらの作業となった。その過程はいとおしくわが子を育てているかのように大切に見守った。

長かった梅雨が明け、一気に猛暑の夏がやってきた。よし、今日から三日三晩の土用干しだ。

簾(すだれ)を広げた上に、紫蘇(しそ)に染まった紅色のきれいな梅を並べていたら、昔、庭先で梅を干していた母の姿が重なり一緒に作業しているかのような不思議な感覚になった。甘酸っぱい香りで鼻の奥がツンとなり、思い出とともに胸いっぱいに広がった。

9月に娘の結婚式がある。大阪から両親が来るのも最後になるだろう。太陽の恵みをいっぱい浴びた真っ赤な梅干しを、真っ白なご飯にのせて母直伝の梅干しを賞味してもらおう。

「お母さん、この年でようやく引き継げたよ、ありがとう、待ってるね」

落合幸恵 パート 57 神奈川県横浜市