岩波文庫? いえ、「岩波文庫的」です-。岩波書店は29日、作家の佐藤正午さん(64)の直木賞受賞作『月の満ち欠け』を、岩波文庫をイメージした装丁とサイズで10月に刊行することを明らかにした。老舗出版社である岩波書店が自らこのようなパロディーを行うのは珍しく、担当編集者は「岩波としてもこの種の試みは初めて」と話している。
『月の満ち欠け』は、欠けた月が再び満ちるように生まれ変わりを繰り返し、愛する人との再会を願う女性の切ない魂の物語を描いた長編小説。平成29年4月に岩波書店から刊行され、同年の直木賞を受賞した。
担当編集者によると、佐藤さんは同作が直木賞候補だったころから「受賞したら岩波文庫に入れてほしい」などと冗談半分で話していたという。
ただ、岩波文庫は長い年月の評価に耐えた古典を収録しており、日本の小説も夏目漱石ら文豪の作品が中心。そのため、刊行後まだ2年半の同作を、岩波文庫ではない文庫本『岩波文庫的 月の満ち欠け』として刊行することを決めた。
装丁は一見すると岩波文庫のようだが、通常は「緑」(現代日本文学)のカバーの背の色が月の光を意識した「ゴールド」だったり、表紙の左下のマークが「月の満ち欠け」をイメージして微妙に変わっているなど、ちょっとしたいたずら心が添えられている。
刊行は10月4日を予定している。価格は850円(税別)。