朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外したのは不当な差別で憲法違反にあたるとして、大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市)を運営する学校法人「大阪朝鮮学園」(大阪市)が取り消しなどを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は学園側の上告を退ける決定をした。国に除外処分の取り消しを命じて無償化対象に指定するよう義務付けた1審大阪地裁判決を取り消し、原告側逆転敗訴とした2審大阪高裁判決が確定した。決定は27日付。5裁判官全員一致の結論。
全国5地裁・支部で起こされた同種訴訟で判決が確定するのは、同日付で最高裁が決定した東京訴訟に続き2例目。係争中の訴訟の審理にも影響を与えそうだ。大阪地裁判決が唯一原告の請求を認めたが、大阪高裁で覆っていた。
高校無償化制度は、公立校では授業料を取らず、私立校の生徒らには支援金を支給する仕組みで、民主党政権の目玉政策として平成22年に始まった。24年の第2次安倍晋三政権発足後、下村博文文部科学相(当時)が、拉致問題や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係を問題視し、25年に省令を改正、朝鮮学校を対象外とした。
訴訟の主な争点は、国の判断が裁量権の逸脱、乱用に当たるか否かだった。
29年7月の1審大阪地裁判決は、国が文科省令を改正して朝鮮学校を無償化の対象外としたのは「拉致問題解決の妨げになり、国民の理解が得られないという外交的、政治的意見に基づくもの」と指摘。教育の機会均等の確保という趣旨から外れ、「違法、無効と解すべきだ」とし、無償化対象に指定するよう義務付ける判決を言い渡した。朝鮮学校の教育内容については「北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き、朝鮮総連が一定程度関与していることが認められる」としつつも、「不当な支配」とは評価できないとした。
これに対し、30年9月の2審大阪高裁判決は、朝鮮総連が学校側を指導し、総連幹部に元校長が就くなど人事交流もあり、北朝鮮の指導者を礼賛(らいさん)する記載のある教科書を使用している点を重視。総連の財政支援もあり「教育の自主性をゆがめるような支配を受けている合理的な疑いがある」と認定した上で、適用除外とした文科相の判断に裁量権の逸脱や乱用はなかったと結論付けた。