国際情勢分析

ペルシャ湾「有志連合」で日本は外国船を守れるか

明海大の小谷哲男准教授は「この段階では日本としてできることを積極的に示し、有志連合の考え方に影響を与えることが必要だ」と述べ、例としてソマリア沖の海賊対処のためジブチにいる自衛隊のP3C哨戒機が中東の海域を警戒監視することを提案した。河野氏は賛同した上で、仮にタンカーが危機的状況に陥り、日本の海上交通路(シーレーン)が非常に危うくなった場合には「自衛隊の艦船による直接防衛しか選択肢としてありえない」と述べた。

有志連合は非常に危ういとまでは言えないグレーゾーン、あるいは平時の船舶護衛を想定しているとみられる。この段階での艦船によるタンカー護衛の法的根拠として、小谷氏は自衛隊法の海上警備行動が有力との認識を示した上で、「外国船を守ることができず、護衛している船を守るための危害射撃に非常に制約がある」と課題を指摘した。

大森氏によると、2018年にホルムズ海峡を通過した日本関係船舶はタンカー約500隻を含む約1700隻。1日あたり4~5隻が通過する計算だ。

日本関係船舶だけで船団を組み、自衛隊の艦船が海上警備行動として護衛する方法もあるが、有志連合では参加国がそれぞれに担当海域を受け持ち多国籍の船団を護衛する「ゾーン・ディフェンス」を敷く可能性も考えられる。そうした場合に「自衛隊が外国船を守る必要があるという政治的な議論が起きれば、特措法を作らなければならないという状況になる」と河野氏は予想した。

どのような形であれ日本が有志連合に参加する場合、「イランとの関係があまりよくならないということは覚悟しなければいけない」と放送大学の高橋和夫名誉教授は指摘した。イランの基本的な立場は「ペルシャ湾のことは自分たちでやるから外国は入ってくるなというものだ」と説明。日本政府がイランとの伝統的な友好関係を生かし、米国とイランの緊張緩和を模索する中、有志連合への参加は「政治判断になる」と語った。(外信部 平田雄介)

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