地銀の出資規制緩和 金融庁「方針」、見えぬ収益力改善策

 金融庁は28日、地方銀行の経営強化などを柱とする今年7月~来年6月の重点施策「金融行政方針」をまとめた。企業の出資規制を緩和して地銀経営の基盤となる地域経済の活性化を後押しする一方で、将来性が見込めない金融機関には経営統合も促す内容となった。ただ、地銀が収益力を取り戻すための処方箋はまだ見えていない。

 人口減少に伴う顧客の減少や、超低金利環境の長期化による利ざや(貸出金利と預金金利の差)の縮小で収益が悪化し、地銀を取り巻く経営環境は厳しさを増している。

 金融行政方針の中でも、昨年度は地銀105行のうち45行が、貸し出しや手数料ビジネスなどの「顧客向けサービス業務」で連続赤字に陥っていると指摘。5期以上の連続赤字となっている地銀も27行あり、「黒字転換の進まない状況が続いている」と指摘した。

 ただ、地銀は地元企業に欠かせない金融サービスを提供しており、経営不振に陥れば地域経済に与える影響は図りしれない。そこで今回の方針では地銀を支援する対策が数多く盛り込まれた。

 規制緩和策としては、企業の株式を原則5%までしか保有できないと定めている規制の緩和を掲げた。中小企業の事業承継や雇用確保を後押しするのが狙い。不正防止のため求めている定期的な人事異動を見直し、経営課題に対応するため柔軟な異動を認めることも盛り込まれた。

 一方で、地銀の収益力や、将来的な経営の健全性を監視して改善を促す取り組みを強化。地方銀行の再編を柔軟に認めて体力強化を促す特例法を制定し、単独で改善が困難とみられる場合は経営統合などを促す考えも示した。金融機関が経営破綻に備えて積み立てる「預金保険料率」を健全性に応じて変動させる仕組みの導入も検討するとしており、これには地銀再編を促す狙いもある。

 ただ、統合などでコスト削減を進めるだけでは根本的な問題の解決には繋がらない。逆に事業区域が広がり、「強み」である地域との関係が希薄になる懸念もある。地元企業のニーズをくみ取り、きめ細やかなサービスを提供することで地域経済を支え、将来の融資につなげるといった経済の好循環を生み出す取り組みは今後も求められている。

 地銀以外では、デジタル化に対応した法整備や、高齢化を見据えた金融教育の拡充などが盛り込まれた。

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