【ビアリッツ(フランス南西部)=塩原永久】トランプ米大統領は26日の記者会見で、日本車に高関税を課す措置を「現時点では」考えていないと述べ、将来的な発動は可能だとの認識を示した。日米は貿易交渉で大枠合意し、9月下旬の正式署名を目指すが、交渉カードとしての自動車関税を温存し、さらに対日貿易赤字の是正を迫る構えだ。
トランプ氏は先進7カ国首脳会議(G7サミット)の閉幕に合わせ会見した。
日米両政府は25日に貿易協定について合意した。トランプ氏は会見で、交渉がまとまったことから自動車関税は当面発動しないが、「やろうと思えば後日できる」と指摘し、選択肢を手放さない考えを示した。
トランプ氏は26日、記者団に対し、巨額の対日貿易赤字に不満を表明した。協定内容の詳細を詰め、9月下旬に署名できると自信をみせる一方、「米国にはさまざまなカードがある」と強調。日本が署名を拒めば、自動車関税の発動も視野に入れて対処すると示唆していた。
日本から米市場への輸入車には通常2・5%の関税が上乗せされる。日本は貿易交渉で、農業市場の開放を認める引き換えに、米国に対し、自動車に通常かける関税の撤廃を求めていた。
トランプ氏は記者団から、交渉の大筋妥結に際して関税撤廃をしないかと聞かれ、「なんで、そんなことをするのか? 教えてくれ」と否定した。
米政府は「通商拡大法232条」に基づき、自動車・同部品の輸入が安全保障を脅かす恐れがあるとし、最大25%の追加関税を検討。トランプ氏は5月に判断をいったん先送りしたが、11月に再び判断期限を迎える。