朝晴れエッセー

川で泳ぐ・8月27日

ふるさとは、秋田の山間の小さな村だ。家から4キロも離れた木造の小学校にプールはない。夏休み前になると、先生たちが数人で、それぞれの集落の川を下調べに回る。夏休みの間、子供たちが遊泳できる場所に、印をつけていくのだ。

夏休みになると、川の旗を揚げる当番の保護者は、毎日、川をチェックしに行く。泳いでも良い日は「白い旗」、泳いではいけない日は「赤い旗」を、みんなの家から見えるように、屋根よりも高く掲げる。白い旗の日は、決められた場所に子供たちが集まり、みんなでまとまって川へ向かう。道路で回ると5キロ近くもある、反対の川岸の子供たちも来る。全員で14、15人だっただろうか。兄や姉についてきた幼稚園の子供も交じっていた。

この時期になると、必ず思い出してしまう光景がある。

「おぼれてる!」、誰かが大きな声をあげた。みんないっせいに、指さす方を見る。川の一番深いところを、ぷかぷかと小さなピンクの水泳帽子が浮いたり沈んだりしながら流されていく。すると、次の瞬間には、最年長の男の子が飛び込んでいた。数秒後には、流された女の子を、しっかり抱きかかえて岸にあがってきた。

自然の中で遊ぶのは、常に危険と隣り合わせでもある。こうやって、上の子は下の子を守りながら、大きな事故なく育ってきたことが、今ごろになって感慨深い。

それにしても、上級生はなんと頼もしかったことだろう。

鹿住 敏子 62 埼玉県白岡市