時速350km超! 二重反転式ローターの次世代ヘリコプター、その驚くべき実力が試験飛行で見えた

S-97 RAIDERの速さには、デュアルローターという構成と後部の推進プロペラの両方が貢献している。メインローターは、シコルスキーの「アドバンシング・ブレード・コンセプト」から生まれたものだ。これは1970年代初めに考案されたシステムだが、高コストと技術的な難しさの壁に直面して、なかなか実現しなかった。

2組のローターならではの利点

このシステムでは、反対方向に回転する2組のローターを用いることで、速度が上がるにつれて揚力が減少する従来型のヘリコプターの欠点を打ち消している。

簡単に説明すると、前進飛行しているヘリコプターのローターが水平な円を描いて回っているとき、そのブレードは片側では飛行方向に向かって前進し、反対側では後退していることになる。ヘリコプターの速度が上がるとブレードの後退側は、前進側と比べて揚力が減少したり、あるいは失速状態になったりする。後退する側は前から後ろへ流れる空気に対して相対速度が遅くなるからだ。

2つのローター面がそれぞれ反対方向に回っていれば、この効果を互いに中和して、最高速度を大幅に高めることができる。また二重反転ローターなら、シングルローターの際に胴体に対して発生するトルクが生じず、従来型のヘリコプターの後部にあるテールローターを必要としない。この原理を利用してシコルスキーの技術者たちは、横向きのテールローターの代わりに後ろ向きのプロペラを設けたのである。

前進飛行中はエンジンパワーの大部分がこのプロペラに伝達され、2つのメインローターは揚力の維持に最低限必要な速度で回るだけになる。つまり、このときローターは、飛行機の主翼と同じ働きをしているわけだ。

一方、低速機動の際にはリアプロペラにはほとんど動力が伝わらず、そのほとんどがパワーを必要としているローターへと送られる(たとえリアプロペラが破損したり完全に破壊されたりしても、ヘリコプターのコントロールはローターだけで維持できる)。

二重ローターならではの工夫

シコルスキーは2008年から11年にかけて、実験機「X2」でこのシステムに磨きをかけた。S-97 RAIDERは15年に初飛行しており、より高速でパワフルなデファイアントが続いたのは19年初めのことだった。

2組のローターが接触しないように、シコルスキーは特別に剛性の高いブレードをつくった。このためS-97 RAIDERのブレードは、従来型のヘリコプターのブレードのように弾んだり、たわんだりしない(これまでにも同軸の二重反転ローターを用いたヘリコプターの例はいくつかあり、多くはロシアの航空機メーカーによる。これらは従来型のしなやかなブレードを用い、より複雑な構造のハブにブレードを取り付けていた)。

上下のローターの間隔は3フィート(約91cm)で、やや広めになっている。それでも17年8月の飛行テストでは事故が起きた。低高度で飛行中にローター同士が接触し、機体が墜落したのだ。幸いにもクルーにけがはなかった。

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