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PA(physician assistant、フィジシャン アシスタント)。読んで字のごとく医師の助手。看護師、薬剤師など国家資格者で構成される医療機関で、無資格のアシスタントを独自で養成する試みが成果を上げている。医師の診療をサポートするとともに、一般人感覚で患者や家族に寄り添い、望みを聞き出して医療・介護事業者に取り次ぐ「ハブ」の役割も果たしている。そんなPAが支える訪問診療に密着。彼らの働きから見えるニーズや将来展望について、上下2回に分けて考てみたい。
「アシスタントの木村と申します」。古いアパートの一室に木村圭佑さん(29)の元気な声が響くと、独り暮らしというベッドの男性(77)が相好を崩した。「おう、久しぶりだな。来てくれてうれしいよ」。今回の取材・撮影を許してくれたのも彼への信頼の表れだろう。「いつもやさしく気配りしてくれる」と語った。
前立腺がんを患い、木村さんが所属する「やまと診療所」(東京都板橋区)の訪問診療を受けて1年。雨漏りのバケツを見ながら「こんな所でも、自分の家にいたいもんなんです」
水野慎大(しんた)医師(37)の診察後、男性が木村さんにスマホを見せた。友人から送られた日光旅行の写真だ。「元気になったら行きたいな」「行きましょう! お連れしますよ」。木村さんがベッドに身を乗り出す。水野医師も「旅行介助してくれるボランティアにつなぎましょう。ここからは木村の仕事です」
「東照宮と…華厳の滝も見ないとな」。行きたい場所を聞かれて、男性の顔色がみるみる明るくなってゆく。