2020年東京五輪・パラリンピックで、トライアスロンなどの会場になる東京・お台場の海の水質をめぐり波紋が広がっている。2つのテスト大会が今月行われたが、基準値を超える大腸菌が検出されたり、選手らから「臭い」との声が上がったりした。原因は生活排水の流入が指摘されており、大会組織委員会は「3重のスクリーンで汚水の流入を阻止する」との対策を示す。本番まで1年を切る中、選手の「安全」は確保できるのか。
■検査結果は最悪水準
「正直臭い。トイレのような臭いがする…」。今月11日、お台場のお台場海浜公園周辺で開かれたオープンウオータースイミングのテスト大会に参加した選手から悲鳴が上がった。
15~18日に同じ場所で行われたトライアスロンのテスト大会を兼ねたワールドカップでは、16日午後1時の水質検査で大腸菌が基準値(100ミリリットル以下の海水に含まれる数が250個以内)の2倍を超えていたことが判明。17日のパラのテスト大会はスイム(水泳)が中止となり、ランとバイクのデュアスロンに変更された。
国際トライアスロン連合では、大腸菌の数値などから水質を4段階に分類。16日の検査結果は最悪の「レベル4」に該当する数値だったが、17日中にレベル1まで下がったため、18日は予定通り行われた。
お台場周辺の水質は以前から懸念され、16日は大腸菌などの流入を抑制するために、ポリエステル製の「水中スクリーン」を海面から水中に垂らしていたが、食い止めきれなかったとみられている。
■大雨時は汚水未処理で放出
なぜお台場周辺の海に大腸菌が多いのか。
原因として指摘されるのは下水の流入だ。都下水道局によると、東京23区では、トイレや風呂、台所といった家庭や工場などの汚水と雨水を一緒の下水道管で集め、水再生センター(下水処理場)に運び込む「合流式」が約8割の地域で採用されている。