留学生が学校を除籍された後にアルバイトをしていたり、実習先から失踪した技能実習生が別の場所で働いていたケースもあった。
不法滞在は犯罪の温床になりかねない。在留外国人の管理強化は待ったなしの課題だ。4月には改正出入国管理法(入管法)が施行された。今後は、これまで以上に多くの外国人労働者が入ってくる。出入国在留管理庁(入管庁)には、不正な在留資格の取り締まりに緊張感を持って取り組んでほしい。
入管庁は21日、入管法に基づく平成30年の在留資格取り消し件数を発表した。過去最多だった前年の385件から2倍以上の832件へと大幅に増加した。資格別では「留学」が172件から412件、「技能実習」が8件から19倍の153件に急増した。次に偽装結婚を含む日本人の配偶者等が80件あった。国別ではベトナム416件、中国152件、ネパール62件となっている。
在留資格取り消し件数が、前年から倍増した。入管庁は、29年施行の「改正入管法の運用が軌道に乗ってきたため」と説明する。だが、それ以前から本腰を入れて取り組んできたかは疑問が残る。
確かに改正入管法の施行で速やかに取り消しが可能となった法運用上の理由もあろう。だが、技能実習生の失踪や、所在不明となる留学生が社会問題化し慌てて管理強化した面はなかったか。
今年6月、東京福祉大で1610人の留学生が所在不明になっていたことが発覚した。多くは就労目的で来日し、除籍後も不法就労していたとみられる。大学が犯罪を助長しているも同然だ。こんなでたらめがまかり通っていたことに驚きを禁じ得ない。入管庁は文部科学省と緊密に情報交換し、再発を未然に防ぐべきである。
少子化で日本人学生が減り、経営に苦しむ学校法人は多い。そこにつけ込み留学生を就労目的で斡旋(あっせん)する業者もいる。政府は悪質な業者の取り締まりはもちろん、技能実習生の低賃金や長時間労働など、劣悪な労働環境の改善にも取り組まねばならない。
4月には入管庁も新たに発足した。国家公務員の数が削減される中、同庁は増員されている。所在不明の留学生や消えた技能実習生を放置すれば、焼け太りとの批判は免れまい。在留資格管理の厳格化で不正を防がねばならない。