朝晴れエッセー

ピッツバーグの朝・8月23日

ピッツバーグ郊外のモーテルの窓からながめる朝空はどこまでも晴れ渡り、この後の式典を祝っているかのようであった。

私の亡母の伯父は74年前、硫黄島で玉砕、遺骨はもちろん形見一つ帰らなかったのだが、その伯父が戦死したときに身につけていた日章旗を、ピッツバーグ在住の女性が保管していたことがわかり、受け取りのために渡米したのだった。

返還となったきっかけは、ピッツバーグの日本企業に勤務されているY氏が、偶然日章旗にあった「武運長久」という言葉とその周りに書かれた寄せ書きの意味を彼女に教え、彼女から本当の持ち主に返したいと相談されたことからだった。Y氏は日章旗に寄せ書きされていた方々のお名前と、旗に押された筥崎宮の印から、かつての持ち主は福岡に縁のある人物ではと推測し、福岡のTV局に連絡をされたのだった。

偶然にも日章旗の持ち主を捜しているというニュースを見た私は、TV局に連絡、返還のために渡米することとなった。返還式は、退役軍人、ボランティアの方々により行われた。彼女からは、おじいさんも硫黄島に従軍し、日章旗を戦利品として持ち帰ったものの、戦争のことは一切話さずに他界、旗を形見として持っていたこと、私からは、伯父の遺骨もなく形見一つ帰ってこなかったことなどを語り合った。

その後の式で私は、Y氏のご尽力と、手作りによる心温まる返還式に深く感謝を申しあげた。帰国後、関東在住の親族も集まり、日章旗とともに菩提(ぼだい)寺にて法要を営ませていただいた。

鬼池 栄祐 61 福岡県筑紫野市