フード 食・名店

「日比谷松本楼」 今に伝わるハイカラカレー

【フード 食・名店】「日比谷松本楼」 今に伝わるハイカラカレー
【フード 食・名店】「日比谷松本楼」 今に伝わるハイカラカレー
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 東京・日比谷公園のほぼ中央に位置する老舗洋食店「日比谷松本楼」。大正時代に、ハイカラ洋食として大流行したビーフカレーは今も人気メニューのひとつ。多くの文化人らに愛されてきた、昔ながらの味を訪ねた。(油原聡子)

 明治36年に日本初の洋式公園として誕生した日比谷公園。都心とは思えない緑の森のなかを歩いていくと、老舗洋食店「日比谷松本楼」が見えてくる。白い壁のレトロな外観だ。

 この店は日比谷公園と時を同じくしてオープン。大正12年の関東大震災、昭和46年の沖縄返還デモでの放火と2度焼失し、現在の建物は3代目だ。

 「洋式公園には花壇と洋食レストランを、と設計段階から計画されていたんです」。日比谷松本楼の4代目、小坂文乃社長(51)が教えてくれた。

 創業当時はマンサード屋根と呼ばれる勾配が2段になった洋風屋根の3階建てでバルコニーもあった。小坂社長は「誰でも出入りできる公園という場所自体が珍しかった。きちっと良い着物を着て、出かける場所だったそうです」と話す。

 まだ洋食が珍しかった時代、夏目漱石や石川啄木、高村光太郎…。さまざまな文化人や芸術家が店に集まり、芸術談議に花を咲かせた。「馬車で訪れる人も多かった。今も店の裏に、馬用の水飲み場が残されているんですよ」と小坂社長。

ぶれない味

 大正時代に入ると、モボ(モダンボーイ)やモガ(モダンガール)と呼ばれる先進的な若者の間では、「松本楼でカレーを食べて、コーヒーを飲む」のが大流行した。

 今でもハイカラビーフカレーは、日比谷松本楼1階の「グリル&ガーデンテラス」で受け継がれている。

 六川健料理長(52)は「カレーは家庭でも作ることができるし、食べ慣れているからこそ難しい。家では出せないといわれる味を目指しています」。とろみのある英国風のシンプルなカレーで、具材はタマネギと牛肉だけ。今でも人気のメニューの一つだ。

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