大型の台風10号は15日に上陸し、列島各地で猛威を振るった。死傷者が出たのは悔やまれる。だが台風の規模から考えると、被害は小さくてすんだといってよい。
早めに対策を講じ避難するなどの防災意識が住民や自治体、企業に浸透してきているのだろう。近年、日本は大型の台風に相次いで見舞われている。今後も防災の意識を持ち続けたい。
JR各社が早い段階から計画運休に踏み切ったのは、積極的な対策として評価できる。定着させたい流れである。
JR西日本は13日の時点で、15日に山陽新幹線の運転を見合わせる可能性があるとし、前日の14日には新大阪-小倉駅間の運休をホームページなどで発表した。中国地方の在来線の運休も事前に周知された。JR東海やJR九州も同様の対応を取った。
お盆で多くの人が移動する時期である。大切なのは運休を利用者に早く知らせ、混乱を最小限に抑えることだ。
計画運休を実施することで、不要不急の外出を控えたりイベントを休止にしたりするなど、社会の安全を確保する効果もあるとされる。今回も多くのレジャー施設が休みになり、イベントも中止になった。安全を最優先にするにはやむを得ないことだ。
昨年の台風24号では、JR東日本が首都圏で初めて本格的な計画運休を実施した。利用者への周知が遅れるなど、課題も残した。
国土交通省は検討会議を開き、運休の可能性や計画運休を発表する時期などについて前もって定めるタイムラインを、鉄道各社が用意しておくこととした。こうした準備が生かされたといえる。
日本を訪れている外国人のための情報発信も欠かせない。鉄道各社はホームページに複数の外国語で情報を記載した。混乱を回避する一助となっただろう。
今回、学校や企業は夏季休暇中のところが多かった。平日に鉄道が止まれば影響はさらに大きくなる。休校や休業も含めた台風対策を、各組織が平素からしっかりと練っておく必要がある。
大型台風は今後も避けられそうにない。命を守ることを最優先としつつ、社会活動への影響を最小限に抑える方法も考えなければならない。今回の計画運休に課題はなかったか検証し、より有効なものとしてほしい。