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京都に約450年続く樂焼(らくやき)の家がある。茶の湯の大成者、千利休の創意を受けて樂茶碗を創り出した陶工・長次郎を初代とする樂家。今も茶道の家元、千家の茶碗を造る茶碗師を務め、当主は代々樂吉左衞門(らくきちざえもん)を名乗ってきた。新たな御代を迎えた令和元年7月、十五代が隠居して、十六代に代替わり。若き当主に伝統を担う覚悟を聞いた。
「十六代の茶碗」造りたい
「座禅のときに警策(けいさく)(棒状の板)でピシッと打たれたときのような感じ。思っていた以上に引き締まった気持ちがしています」。戸籍も届け出て名実ともに樂吉左衞門に、父は隠居名の直入(じきにゅう)となった。旧家などでは戸籍名を変える例はあるが、父の場合、生まれたときの名から吉左衞門を経て直入へ。3度というのは戸籍法が制定されて以降、珍しいという。
日本の伝統文化、茶道は千利休が大成した。京都には、利休を祖とする千家の茶道具を作る職方の十家、「千家十職(せんけじっしょく)」があり、樂家はそのうちの茶碗師だ。初代長次郎は利休のためにそれまでになかった新たな茶の湯の茶碗、赤と黒の樂茶碗を造った。