浪速風

終戦の日と夜間学校の戦争孤児

「胸のところにねェ、氏名と生年月日を書いた布が縫いつけてあったそうです。名前を訊かれても『マコちゃん』としか言えんそうやったから」(『骸骨ビルの庭』から)。戦争を知らない世代ゆえ、戦争孤児のなんたるかを宮本輝さんの小説で知った。平成21年の司馬遼太郎賞受賞作である。

▶その数、12万人超とも。まだ幼くて自分の名もわからない、そんな小説の「マコちゃん」の現実を、朝刊連載「夜間中学はいま」で見つけた。4月20日付で登場した兵庫県姫路市の村上玉子さんだ。物心ついた頃には両親はおらず、自分の生まれた日も名も知らなかった。他人の家を転々と渡り歩き、子守をしながら暮らした。

▶結婚し子供を育て、定年を迎えてようやく、あこがれの「学校」へ入学したのは61歳だったそうだ。74回目の終戦の日を迎えた。日本中が戦没者に瞑目(めいもく)する今日、悼む親きょうだいすら知らず、歯を食いしばって生きてきた人たちがいる。