松山市の20代の女子大生が身に覚えのない窃盗事件で愛媛県警に逮捕される誤認逮捕があった。女子大生は「不安、恐怖、怒り、屈辱といった感情が常に襲い、ぴったりと当てはまる言葉が見つからないほど耐え難いものだった」などとする手記を公表、県警本部長は謝罪に追い込まれた。県警はなぜ誤認逮捕をしたのか。そこには「思い込みによる捜査」というずさんな状況があったようだ。
一貫して否認も逮捕
「誠に申し訳なく、心よりおわび申し上げます」
8月6日、愛媛県議会の委員会で、松下整(まつした・ひとし)県警本部長が頭を下げた。
事件は今年1月9日未明に市内で発生。タクシーの運転手が何者かに現金5万円とセカンドバッグを盗まれた。容疑者として浮上したのはタクシーのドライブレコーダーに写っていた女。女はタクシーから降りた後、とあるアパートに入っていった。女子大生が住むアパートだった。
女子大生は5月27日、自宅に置かれた県警松山東署捜査員の手紙を見つけ、まったく身に覚えはないが、署に出向いた。
事情聴取が行われたが、女子大生はドライブレコーダーの画像と顔立ちが似ていたほか、事件当日にタクシーに乗っていないことを証明することができなかった。女子大生はドラレコの画像とは別人だと訴えたが、容疑者のような扱いを受けたという。
6月4日、再度の呼び出しを受けた女子大生は、顔の3D画像撮影やポリグラフ検査を受けた。その時の心境を手記にこうつづっている。
「体力的にも精神的にもつらかったですが、素直に応じました。そうすることで身の潔白を証明できると信じていたからです」
だが7月8日、捜査員が自宅にやってきて任意同行を求められ、そのまま窃盗容疑で逮捕された。
「早く認めた方がいいよ」
「手錠をかけられたときのショックは、忘れたいのに忘れることができず、今でもつらい」と手記で述べた女子大生。弁護人となった安藤陽介弁護士は「任意の段階でも『就職も決まっているんだろう』『早く認めた方がいいよ』と執拗(しつよう)に自白を求めるような発言があった」と違法性を指摘する。