露、デモ一転許可 5万人集結 モスクワ市議選の候補排除に抗議

プーチン政権と抗議行動
プーチン政権と抗議行動

 【モスクワ=小野田雄一】モスクワ市議会選(定数45)での候補者排除に抗議するデモが10日、同市中心部で行われた。デモは5週末連続。これまでに参加者2000人以上が治安当局に拘束されたが、市当局は10日のデモ開催を許可し、態度を軟化させた。同市議選を含む9月8日の統一地方選では与党「統一ロシア」の苦戦が予想されており、プーチン政権は硬軟両構えでモスクワの抗議運動を収束させたい考えだ。

 民間グループの集計によると、10日の抗議集会には雨天の中で約5万人が参加。「プーチンは泥棒だ」「ロシアは自由になる」などと気勢をあげ、拘束された人々の釈放も求めた。

 一連のデモは7月、モスクワ市選管が反政権派の10人以上について、書類の不備を理由に候補者登録を拒否したことが発端だ。反政権派指導者ナワリヌイ氏の周辺者や、リベラル政党「ヤブロコ」のメンバーらが出馬を却下された。

 プーチン政権の「管理選挙」により、中央・地方の議会は与党および親大統領の「体制内野党」でほぼ固められてきた。中央集権の進んだロシアで地方議会に大きな役割はなく、これまでモスクワ市議選の候補者排除で大規模な抗議行動が起きることはなかった。

 7月20日のデモには推定2万2千人が参加。無許可だった7月27日と8月3日のデモでは計2000人以上が拘束された。

 経済低迷の長期化を背景に、ロシアではプーチン体制に対する倦怠(けんたい)感が蓄積している。政権が昨年夏、年金支給年齢の引き上げを発表したのを機に、プーチン大統領や政府の支持率は低下し、身近な問題をめぐる地方当局への抗議行動が頻発するようになった。

 9月8日には、モスクワ市議選以外に16の州や共和国で首長選が予定され、「統一ロシア」への逆風が吹いている。国営世論調査機関の7月のデータでは、同党の支持率は32%にとどまった。管理選挙への抗議運動が広がったり、与党の敗北が相次いだりすれば、政権への打撃となる。

 政治アナリストのミンチェンコ氏は「モスクワでのデモは現在の政治システムへの反発だ」と露メディアに指摘。インターネットの発達で「テレビ局を通じた政治宣伝」というプーチン政権の統治モデルが通用しなくなっていると分析した。「当局の不用意な行動は反発を呼び、本格的な政治危機を招く可能性がある」とも述べている。

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