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低所得世帯の学生を対象に、大学など高等教育機関の無償化を図る新法「大学無償化法」が成立し、来年4月の施行に向けた申請締め切りが迫る。授業料と入学金の減免制度が新たに創設され、給付型奨学金が拡充されたが、対象外の中間所得層はこれまでの減免制度を受けられなくなり、負担増につながりかねないとの懸念も。関係者からは、対象範囲の見直しを求める声が上がっている。(加納裕子)
進学のハードル
「助かる子は間違いなくいる。ただ、これで『貧困の連鎖』などが解決したように思われないかが不安です」。大阪府箕面市などでひとり親家庭の中高生を対象にした学習塾を運営するNPO法人「あっとすくーる」の代表、渡剛さん(30)は心配する。
父親がいない家庭で育った渡さんは、金銭的な問題で大学進学を一時あきらめたが、奨学金の支給を受けて大阪大学を卒業。しかし、今も奨学金の返済が重くのしかかる。
ひとり親家庭の中高生らと向き合う中で、「大学の授業料だけが課題という子供は、むしろ少ない」と感じている。教育費の捻出が難しい家庭の子供は幼少期から塾に通ったり、参考書を買ったりすることが難しいことなどから早い段階で成績が伸び悩み、「大学に行きたい」との目標が持てない子供もいるからだ。
来年度からは入試改革も始まり、大学入試センター試験の代わりに大学入学共通テストが導入される。記述式の設問が加わるほか、英語では「読む・聞く・書く・話す」の4技能を評価するため民間の資格・検定試験が活用される。渡さんは「問題は全般的に難しくなる。塾に行けず、英語の民間試験を何度も受けるような経済的余裕のない子たちには、大学進学のハードルがかなり高くなる」と指摘する。