朝晴れエッセー

千羽鶴・7月28日

「折鶴を千個つくるわ、病気治るねんて! おしえてもろてん!」と通所施設から帰るなり目をまん丸にした娘。

「ほんまに? ちゃん(娘の愛称)の病気治るといいなぁ」と言うと、「ちがうで、お母さんが元気になるようにつくるねんやん、折り紙は私が買うし…」。

31年前、娘は重い心臓病と知的障害を持って生まれてきた。その病気と障害に向き合うことにただただ必死だった毎日に自分の体のことは後回しにしてきた。臆病(おくびょう)な私はいつしかそれが癖になり病院を遠ざけてしまった。

やがて年を重ねるごとに無理もきかなくなり、幾度かの入院や手術を経験することに。その度に涙一つ見せず、明るく振る舞い、留守番をしてくれていた娘、どれほど心細い思いをさせてしまっていたのだろう、胸が痛む。

決して上手とはいえない折り鶴を一心に折り続けてくれる、来る日も来る日も。十以上を数えることができない娘にとって千という数は果てしないものなのかもしれない。

娘は1カ月に2千円ほどのお給料をいただいてくる。その半分は大好きな藤井フミヤさんのライブへ行くため貯金箱へ。あとの半分は折り紙代に消えてゆく。

私が病院へ行く朝は「ええこと言われておいでや!」と折り鶴を2羽持たせてくれる。もうそれだけで元気になれる。折り鶴をぎゅっと握りしめて精いっぱいの元気を込めてこたえる。「ええこと言われてくるわな!」

上代(じょうだい) 智津子 59 奈良県北葛城郡