アポロ月面着陸50年

地上にも技術革新の果実 産業や暮らしに浸透

 人類初の月面着陸を実現した米アポロ計画は、多くの技術革新と波及効果を生み出した。その成果は半世紀たった今も世界の宇宙開発を支えている。地上でも産業や暮らしに幅広く生かされ、芸術や文化にも影響を与えた。

 米国がピーク時で40万人を動員し、総力を挙げて取り組んだアポロ計画。ケネディ大統領が1961年に掲げたのは、わずか9年間での目標達成だった。実現に向け米航空宇宙局(NASA)が打ち立てたのが、巨大計画を進める2つの手法だ。

 ロケットや宇宙船の開発、管制室の整備や態勢の確立、飛行士の訓練など多岐にわたる活動を効率的に進める「プロジェクトマネジメント」と、それぞれの進み具合を統合的に把握、検証し合理的に目標を達成する「システム工学」だ。

 日本はこれらをNASAから学び、国際宇宙ステーション(ISS)の実験棟「きぼう」や物資補給機「こうのとり」の開発を成功させた。

 2つの手法は今日、地上でも工場や鉄道、原子力発電所の建設・運転のほか、ビジネスや組織運営などで広く活用されている。きぼうの開発を担当した元宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の長谷川義幸氏は「システムの言葉はアポロから社会に広がった。大きな目標を期日までに確実に達成する普遍的な仕組みを示し、あらゆる分野に影響を与えている」と話す。

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