朝晴れエッセー

ありがとう・7月27日

白い長毛、ライオンのようなたてがみをもったどこか気品のあるたたずまいのわが家の愛猫。名を「ミルク」という。

5年前の夏、獣医をしていた娘の動物病院に入院したが、飼い主が引き取りに来ず、病院に捨てられたミルクを娘が引き取った。そして5年前、「猫大嫌い」の私と「猫大好き」の夫の元にやってきた。

飼い主に捨てられたにもかかわらず、ミルクはとても人間好き。仕事から帰った私たちを玄関に出迎えて、風呂場にもトイレにもどこにでもついてきては柔らかい体をすり寄せた。警戒感が全くなく、腹を見せては床にゴロンと寝そべる。押し入れを上手にあけては、暗い隙間に潜り込む。

毎晩一緒の布団で寝るうちに、私の猫嫌いはどこへやら。子供たちが巣立って会話が乏しくなりがちな私たち夫婦にとっては、まさに「猫はかすがい」と言っても過言ではなかった。

そのミルクが、先月腎不全で天国へ旅立った。14歳。もっともっと一緒にいたかった。葬儀で流した涙が、どうにかこうにか乾いた後も、家の中のどこにいても、「ああ、ここによくちょこんと座って私たちを見上げてたよなあ」と思い出しては、鼻の奥がツンとなる。

ミルク、たくさんの思い出をありがとう。たくさんのいやしをありがとう。家族をつないでくれて、ありがとう。わが家にきてくれて、本当にありがとう。今や私は、無類の猫好きとなった。

安喰(あんじき) 千江美 60 兵庫県姫路市