「裏切られたような気持ち」。男の完全責任能力を認定する一方、1審と何ら変わらぬ量刑に、遺族は肩を落とした。4年前、和歌山県で小学5年の男児(11)が近所の男に刺殺された事件。殺人罪などに問われた男の控訴審判決で大阪高裁は7月、被告は心神耗弱だとして懲役16年とした1審判決を破棄しながら、改めて1審と同じ懲役16年の判決を言い渡した。異なる判断で同じ量刑-。その理由はどこにあったのか。
1審判決破棄も…
7月16日、大阪市内の記者会見場。和歌山県紀の川市で平成27年2月に刺殺された森田都史(とし)君の父親(71)が声を絞り出した。
「納得できない」「息子に報告できない」
この直前、殺人罪などに問われた中村桜洲(おうしゅう)被告(26)の控訴審判決公判が大阪高裁で開かれた。
「原判決を破棄する。被告人を懲役16年に処する」
高裁の和田真裁判長が選択したのは、1審和歌山地裁の裁判員裁判判決の破棄と、懲役16年の判決。そして被告について「犯行時には完全責任能力があったと解される」と述べた。
森田君の父親は唇をかむ。「1審と同じ量刑だが、罪は今の方が一段と軽くなったと思っている。責任能力が認められたのに…」