虎番疾風録

「三塁・岡田」にファン狂喜 其の参28

虎番疾風録 其の参27

記念すべき日がやってきた。4月22日、横浜球場での大洋3回戦。試合前、虎ファンたちはセンターのスコアボードに注目していた。8番に「三塁・岡田」の名前が入るや、待ってました―とばかりに狂喜乱舞だ。

◇4月22日 横浜球場

阪神 121 020 030=9

大洋 100 001 002=4

(勝)山本2勝 (敗)高橋1敗

(本)ラインバック(1)(高橋)

試合は阪神の圧勝。3打席凡退していた岡田も八回、1死二塁のチャンスで加藤から左前へタイムリー。プロ初ヒット、初打点をマークした。守っても五回にミヤーンのライン際の痛烈なゴロを逆シングルでさばくなど、柔軟な守備を披露した。

「最初は硬くなったけど、だんだん慣れてきました。相手ピッチャーにも〝くるならこい〟という気持ちでいけました」。〈ええ顔してるがなぁ〉岡田の初めてみせる会心の笑顔だった。

試合後、記者たちは球団ブースからニコニコ顔で出てきた小津球団社長を取り囲んだ。

「ブレイザーと話し合ったか? 皆さんのご想像にお任せしますよ。〝阿吽(あうん)の呼吸〟というやつで、岡田がスタメンから出るということになったんですよ」

いやはや、小津社長らしい。前日(21日)の夜、大阪から横浜に電話をかけ「君の気持ちはよく分かるが、ファンの声はおろそかにできん」とブレイザー監督を説得したことは、記者の誰もが知っている。それが分かっていての言い回しなのだ。

「経営者の立場としてはファンの声は無視できんからね。とにかく岡田も打った。すべてうまくいった。ブレイザーもヒルトンもプレッシャーがなくなるはずだ」

〈ん、ブレイザーのプレッシャーってなんや?〉何か少しひっかかった。が、そのまま監督の会見に―。

「岡田の三塁の正式決定は昨夜だ。本人には緊張するといけないので、球場入りまで伏せておいた。起用の理由? 巨人3連戦でチームの状態が悪くなって、打開策が必要だったからだ。当分、岡田は三塁。布陣を変える必要はないね」

〈よくまぁ、ケロリとした顔をして言えるもんや〉とあきれた。とはいえ、これで「岡田問題」も一件落着―そう思っていた。(敬称略)

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