朝晴れエッセー

詐欺師見習い? も人の子・7月24日

あの手この手で高齢者をだます詐欺被害が後を絶たない最近、俳句仲間のS子さん宅にも息子を名乗る男から電話があったとのこと。

「R太郎だけど」の第一声で息子でないことがすぐ分かったが、だまされたふりをして何を話すのか聞いてみることにしたそうです。何気ない会話のあといよいよ本題に。「実は会社のお金を…」と始まったのですぐ遮って「私にお金がないことはあんたが一番よく知っているでしょう?」。

彼女のご主人はずっと以前に亡くなって、母ひとり子ひとりで息子を育て、彼が社会人となり結婚して居を別にしてからも、彼女は誰の世話にもならず絵画や俳句を楽しみ、毅然(きぜん)として生活しているすてきな女性です。ささやかな年金生活の母に大金などないことは息子が一番よく知っているはず、の思いを込めたとのことです。

続けて(これは本当のことで)「実は今、私体調悪くてこれから病院に行くの、予約してあるので電話切るね」と言うと、しばしの沈黙のあと「どうぞお大事に…」と電話が切れたそうです。

その話を聞いた句会の仲間は「詐欺師にお大事にと言われてもね」と最初大笑いしたのですが、誰かが「きっとお母さんを思い出したんだね」「まだ見習い中でもともとそんなに悪い奴でないのかも…」と皆しんみりしてしまいました。

彼も人の子、人をだまして母親を泣かすようなことなく、一日も早く更生してまともな人生を送ってほしいと願わずにはいられませんでした。

諏訪 晴子 79 東京都小平市