江戸時代の町並みを残す観光地、岡山の倉敷美観地区で飲食やアパレル、土産物店の出店ラッシュを迎えている。同地区はもともと文化財保護法に基づく重要伝統的建造物群保存地区などに指定されている。開発規制があるため、新規出店は難しいのだが、そうした中で開店が相次ぐ背景には何があるのだろうか。
空き店舗は売りに出ない
「『うちも出したかった』という声が聞こえてきましたね。実にうらやましがられる出店でした」
現地の不動産仲介業者がこう話すのは、土産物用の果物やスイーツを販売しているフルーツジャパン(岡山市)が4月に美観地区にオープンした「くらしき桃子総本店」のこと。
すでに同社は美観地区内で2店舗を展開していたが観光客の急増を受け、新たに3店舗目として「総本店」を出した。桃やブドウなど果物をふんだんに使ったパフェが人気となり、飲み物とセットで2千円を超えるが、平日でも売り切れが出るほどという。
美観地区は中心部を流れる倉敷川沿いにメインストリートがあり、新店舗はそこに開店した。長年空き家だった場所で、所有者はテナント募集はかけず、要望があっても応じていなかった中での出店実現。フルーツジャパンの担当者は「人を通じて紹介いただき、『くらしき桃子さんなら』と応じていただいた」と説明した。
地元不動産業者は「この地域は新規物件の売り出しや貸し出しの情報は出ない。個人的なつながりで決まってしまうんです」と地域独特の商習慣を明かす。
来客、計画前倒しで達成
倉敷市の観光振興などを図る公益社団法人「倉敷観光コンベンションビューロー」に所属する店舗は、美観地区とその周辺に257ある。
一方、同地区は21ヘクタールの土地に、白壁の蔵屋敷、なまこ壁、川沿いの柳並木が広がる町並み保存地区。また、文化財保護法に基づく重要伝統的建造物群保存地区などに指定されており、開発規制がある。新規出店のハードルは高い。
そうした中、平成24年に古い店舗跡を再生する形で飲食、物販店「林源十郎商店」がオープン。その後、古民家の改装などの手段を通じた同様の新規出店が相次いだ。