マレーシア機撃墜5年 露の元大佐ら起訴も全容解明遠く

マレーシア機墜落現場
マレーシア機墜落現場

 【モスクワ=小野田雄一】ウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜され、乗客乗員298人が犠牲となった事件から5年が過ぎた。オランダを中心とする国際合同捜査チームはロシア軍の地対空ミサイル「ブク」が撃墜に使われたとし、今年6月にはロシア情報機関の元大佐ら4人を殺人罪で起訴した。だが、4被告の身柄を確保できる見通しはなく、ミサイルの搬入や発射の指揮系統など、全容を解明するまでの道のりは遠い。

 事件は2014年7月17日、親露派武装勢力とウクライナ軍の戦闘が起きていた同国東部で発生。上空を飛行していたアムステルダム発クアラルンプール行きマレーシア航空機が撃墜され、乗客乗員の全員が死亡した。犠牲者の約3分の2はオランダ人だった。

 オランダやマレーシアなど5カ国の捜査当局は、オランダでの刑事責任追及に向けた合同捜査チームを組織。16年9月には、ロシアから運搬された「ブク」が親露派支配地域から発射されたと発表した。それまでに米政府や別の国際調査チームが示していた見方を裏付ける内容だった。

 ウクライナ東部ドネツク州の墜落現場周辺はロシアの支援を受ける親露派武装勢力が実効支配しており、当初から親露派の捜査妨害が問題視された。合同捜査チームは、回収した機体の分析や目撃証言の収集、衛星写真や傍受した通信記録の解析によって捜査を進めた。

 合同捜査チームは18年5月、「ブク」を運搬したのが露南西部クルスクを拠点とする露軍第53防空旅団だったとも特定。今年6月には、撃墜に関与したとして、露連邦保安局(FSB)元大佐のイーゴリ・ギルキン(別名イーゴリ・ストレルコフ)容疑者ら4人を殺人罪で起訴した。

 ギルキン被告はドネツク州の親露派で「国防相」を務めていた。他に、露軍参謀本部情報総局(GRU)出身のロシア人2人と、ウクライナ国籍の親露派野戦司令官が起訴された。オランダ捜査当局者は4被告について、発射ボタンを自ら押したわけではないものの、現地へのミサイル搬入で重要な役割を果たしたとみている。

 露政府は事件について、「撃墜はウクライナ軍が行った」「捜査チームの見解には根拠がない」などと一貫して関与を否定している。公判は来年3月にオランダの裁判所で始まる予定だが、ロシアが被告らの身柄引き渡しに応じる可能性は限りなく低い。

 どのような指揮系統でブクが搬入されたのか。実際の発射は誰がどう命じ、実行されたのか。未解明の点が数多く残るこの事件の捜査に、ロシアの非協力的な姿勢が立ちはだかる。

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