朝晴れエッセー

朝の駐車場・7月20日

私の住んでいるマンションの近くには、吹奏楽部で有名な高校がある。今日も朝からフルートやトランペットやホルンの音がきこえてくる。朝練だ。駐車場に向かいながら私は少し甘酸っぱい気持ちになる。

それは私も高校の吹奏楽部員だったからだ。始業前に練習し、放課後も休みの日にも練習した。将来のこととか何も考えず、ただ演奏が上手になりたい気持ちでいっぱいだった。

今の夫にもそこで出会った。

そのころの彼は、まあ今もだが、無口でおっとりしていてみんなに「おじんくさい」と言われて、「いい人だけどね」という存在だった。そして10年前に再会したときには年齢が追いついて温厚な紳士となっていた。

5年前、娘たちが独立して一人になった私にプロポーズしてくれた。人生とは不思議なもので、夫は初婚なのに次の年には花嫁の父としてバージンロードを歩くことになり、今は孫をあやしている。

駐車場の周りに咲いているくちなしの花の甘い香りの中を歩みながら、彼はどう思っているのかな、と考える。聞いたところで、きっとにこにこしながら、いやとかそのとか言うだけだろうな。伝えるのがへたすぎるから。

さあ出勤だ。車を走らせるとだんだんと演奏が遠のいていく。

楽器の練習とともに青春を過ごす彼ら彼女たちに、今はきらきらの時間を過ごしているんだよと心の中で伝えた。

藤井 泉 60 会社員 大阪府守口市