芥川賞 今村作品は「文句なしの決定」 小川洋子選考委員が講評

第161回芥川賞の選考過程を説明する選考委員の小川洋子さん=17日、東京都中央区
第161回芥川賞の選考過程を説明する選考委員の小川洋子さん=17日、東京都中央区

第161回芥川賞が17日発表され、今村夏子さん(39)の「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)に決まった。選考会後、選考委員の小川洋子さん(57)が会見に臨み、選考経過について説明した。概要は次の通り。

「今村作品が最初の投票で過半数を獲得し、2回目の投票でさらに点数を伸ばしました。文句なしの決定でした」

「最初の投票では、高山羽根子さんの『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』(すばる5月号)と、李琴峰(ことみ)さんの『五つ数えれば三日月が』(文学界6月号)の2作品を強く推す選考委員もいました。(今村作品との)同時受賞の可能性も議論しましたが、この2作品は(2回目の投票でも)票が過半数に到達せず、今村さんの1作になりました」

--選考過程について

「今村作品は、常軌を逸した人間本人を語り手にして描いています。それは非常に難しいことです。『むらさきのスカートの女』という、いるのかいないのかという不思議な存在を鏡にして、それに写る語り手の『私』の本質に迫る構造を描くことに成功しています。選考委員からは『こういう奇妙な世界を描けるのは今村さんだけだ』という意見もありました」

「作品の解釈では議論になり、選考委員の間でも読み方が分かれました。ただ、それが作品の評価を落とすのではなく、むしろ高めたことで、2回目の投票では票がさらに伸びました。今村さんは独自の、狂気を突き抜けた先にある哀れさのようなものを描ける人だと再認識できました」