AYA世代の日々 がんとともに生きる

(5)社会とのつながり、生きる力に キャンサーペアレンツ代表理事・西口洋平さん

 踏ん切りがつかずにいたら、診断から半年くらいたったころ、自宅でテレビ番組を見ているとき、娘が出演しているタレントを見て、「父ちゃんと同じ病気だね」って言ったんです。妻が話してくれていたんでしょうね。娘が深刻になりすぎずに受け止めてくれていたので、「知っていたんだ」と気持ちが楽になりました。

モヤモヤ共有

 仕事人間で子育てにはほとんど関わっていなかったのですが、がんと診断され、家族と過ごす時間を増やしました。このまま死んだら、家族の思い出がないまま。そんなお父さんは嫌だったからです。

 治療と並行して28年から、キャンサーペアレンツの活動を始めました。周囲に同世代のがん患者がいなかったし、僕自身が子供への病気の伝え方に悩んだときに情報を見つけられなかった。

 1人で始めた活動ですが、現在は会員も3200人にまで増えました。会員同士でつながることもできるし、各地でオフ会も開かれています。

 来年で診断されてから丸5年。統計上3%しか生きられないと言われましたが、ここまでこれたのは仲間ができて、心のモヤモヤを共有できたのも大きい。キャンサーペアレンツの活動や仕事、父親といろんな役割があったから、治療を頑張ろうと思えました。

 患者同士の交流だけでなく、患者自身が仕事や活動に参加し、積極的に社会とつながることが、明日を生きる力になるのではないでしょうか。

【プロフィル】西口洋平(にしぐち・ようへい) 昭和54年、大阪府生まれ。大手人材会社の営業職として働いていた平成27年、35歳のときにステージ4の胆管がんと診断される。仕事と抗がん剤による治療を続けながら、28年、「キャンサーペアレンツ」を設立した。

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