〈来夏、東京で2回目のオリンピック・パラリンピックが開幕する。昭和39年の東京五輪マラソンで銅メダルに輝いた円谷幸吉に続き、君原健二は8位でゴールした。盟友円谷を失った後も君原はメキシコ五輪で銀メダルを獲得、ミュンヘン五輪でも5位に入賞し、今も走り続けている〉
前の東京五輪は日本の戦後の歴史の中で一番大きなイベントでした。国民の皆さんが喜び、感動し、夢や希望を持ちました。あれから日本は一気にいい方向に向かったのだと思います。前の五輪は日本を変えました。
願わくば来年の大会には世界を変えてほしい。日本の英知を集め、世界の皆さんが喜んでくれる五輪になってほしい。
前回の東京五輪では障害者スポーツが始まったばかりでしたが、今は健常者と対等の大会として種目も増え、全ての人が楽しめるようになっています。開催国である以上、日本選手の活躍も期待したい。前の東京五輪では16の金メダルを獲得しました。メダルだけにこだわることはないと思いますが、やはり国民の期待に応えられる成績を残してほしい。個人的には、前回大会で円谷さんの銅メダル一つに終わった陸上競技に奮起してもらいたい。当時は考えられなかった男子400メートルリレーなども有望な種目になっています。
男子マラソンは厳しい状況にありますが、可能性はあります。レースなので、ふたを開けてみなければ分かりません。なんとか円谷さんに続いて東京でメダルを獲得する日本選手が出てきてくれることを期待したいと思います。
円谷さんの功績を記念して故郷の福島県須賀川市で開催される「円谷幸吉メモリアルマラソン」には毎年、参加しています。これまで36回のうち、1度だけ行けませんでしたが、昨年も走りました。今年も走ります。関係者の方々からは、福島県でスタートする聖火リレーで、円谷さんと一緒に走ってほしいという声を聞きます。ここ、福岡県でも聖火リレーはあります。なんらかの出番があればうれしいですね。
NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)」で金栗四三先生を中村勘九郎さんが演じられております。忠実に演じたいと話される中村さんには、先生と一緒に撮った写真をお見せして大変喜んでいただきました。ドラマは39年の東京五輪までを描くそうですから、必ず誰かが円谷さんを演じられるのでしょう。ついででもいいので、私の役も誰かが演じてくれるのではないかと、期待しています。(聞き手 別府育郎)
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【プロフィル】君原健二(きみはら・けんじ) 昭和16年3月、福岡県小倉市(現・北九州市)に生まれる。東京、メキシコ、ミュンヘンと五輪3大会連続でマラソンを走り、メキシコの銀を含む全ての大会で1桁順位の好成績を残した。競技者として35回のレースを含め、引退後の市民ランナーとしても、通算74回のフルマラソンを全て完走している。