オーストラリア南東部の都市メルボルンで5月下旬、若い女性がホームレスの男に殴り殺される事件が起きた。事件を受け、モリソン豪政権の閣僚が「女性の安全確保」を喫緊の課題に挙げるなど、事件は豪全土で注目された。同国内では外国人を含む女性が襲撃を受けて殺害される事件が相次ぎ、国や関係機関は対策を求められている。
(外信部 岡田美月)
■すさまじく殴打された
豪公共放送ABCや英BBC放送などによると、5月25日朝、ビクトリア州メルボルンの中心部にあるロイヤルパークで、散歩中の市民が女性の遺体を発見し、警察に通報した。女性はコートニー・ヘロンさん(25)。地元警察はホームレスの男、ヘンリー・ハモンド容疑者(27)を逮捕した。代理人弁護士によると、ハモンド容疑者は精神的な病を抱えているという。ヘロンさんは24日夜か25日朝に公園で襲撃されたとみられ、性的暴行の形跡は確認されなかった。
警察は、「すさまじく殴打された結果、死に至った。そうとしか説明のしようがない」と語った。
■事件は全国的な議論へ
ヘロンさん殺害事件は、男性による女性への攻撃という点から注目され、「国民的な議論のきっかけ」(ABC)となった。州警察幹部は「女性への暴力は間違いなく男性の行いだ」(BBC)と強調。同州のダニエル・アンドルーズ州首相も、男性による女性への暴力を非難した。
こうした反応の直接的な背景には、メルボルンでこの1年の間に、女性たちが通り魔に襲われるなどして殺害される事件が相次いでいる現状がある。被害者の中には外国からの留学生もいる。
ヘロンさんが発見された公園の近くでは昨年6月、コメディアンの女性(22)が遺体で発見された。後に19歳の男が殺人と性的暴行の疑いで逮捕された。現場には市民1万人が集まって花束を手向け、涙を流して女性の死を悼んだ。