朝晴れエッセー

ア・ハード・デイズ・ナイト 7月9日

「It,s been a hard day,s night-」。薄暗いライブハウスのステージにはスモークが焚(た)かれ、点滅するスポットライトの下でひいきのアマチュアバンドが歌い出す。ビートルズファンの私も、まだ10代のわが娘も、演奏に合わせて手拍子をしながら歌詞を口ずさむ。

始まりはネット上のビートルズ同好会だった。私はそこで1人のブロガーと出会い、読者になってコメントを書くようになった。毎日更新されるそのブログには、敬愛するビートルズの詳細な情報やらトリビュートバンドのライブリポート、彼の日常などがつづられていた。

そして数カ月後。基本、ネットの人に会うのはご法度なのだが、このブログは信用できると考えた私は、意を決して都内のとあるライブハウスを訪れた。

情報は本物だった。そこではビートルズをこよなく愛する人たちが、自前の楽器で数々の曲を奏で、見事に再現していたのだ。それから数多くのトリビュートバンドの存在を知り、別のライブハウスにも出向くようになった。

この曲では、愛する人のために一日中働いている若者が、帰宅して彼女から強く抱きしめられたらすべての苦労が報われると歌われていて、若きビートルズの熱気がほとばしる佳曲だ。私もこんな言葉を言われてみたかったが、独身のころも結婚、離婚を経て娘と生きていくこれからも、縁がないのが残念だ。

「You know I feel alright…」、ギターの音が空間に余韻を残しつつ、フェイドアウトしてゆく。

増田 由美子 58 茨城県古河市