主張

エネルギー論戦 あまりに低調すぎないか

 これで国民の関心を呼び起こせるとは思えない。参院選に臨む各党のエネルギーをめぐる政策論議のことである。あまりに低調すぎないか。暮らしと産業を支えるエネルギー政策をもっと深く論じ合うべきだ。

 中東の要衝であるホルムズ海峡で、日本のタンカーが攻撃されたばかりだ。日本が輸入する石油の8割以上はこの海峡を通じて運ばれている。日本のエネルギー安全保障を揺るがす深刻な事態である。

 危機に直面しているのに、与党である自民、公明両党は安定的な資源調達に向けた取り組み策を提示していない。「原発ゼロ」などを訴える野党各党も、エネルギー確保の道筋を明示していない。

 太陽光などの再生可能エネルギーの拡大しか語らないようでは理想論にしか聞こえない。責任ある政策とは言えまい。

 参院選の公約は、与党が安全性を確認した原発の再稼働を認める一方、野党は原発ゼロや再稼働を認めない点などでほぼ一致している。とくに立憲民主党は、2030(令和12)年までに石炭火力発電所もゼロにするとしている。

 一方で与野党で共通しているのは再生エネの拡大である。だが、発電量が天候などに大きく左右される再生エネは、その変動を平準化するために火力などの調整電源の確保が必要だ。送電線網の拡充を含め、電力の安定供給に向けたエネルギー像を示すためには、整合性ある政策が欠かせない。

 何より問題なのは、各党ともホルムズ海峡危機という眼前に迫る大きな課題に具体的な対策を示していない点だ。

 海外からの資源輸入に依存する日本にとって深刻な問題だと思わないのか。各党ともエネルギー危機に対する認識が甘いと言わざるを得ない。

 日本のエネルギー自給率は1割に満たず、主要先進国の中で最低水準にある。海外からの化石燃料輸入を段階的に引き下げるためにも、安全性を確認した原発の早期再稼働が重要だ。安易な脱原発論には暮らしや産業の将来を託することはできない。

 貴重な国産電源として再生エネの導入にも賢く取り組む必要がある。ただ、発電コストが高く、調整も難しいだけに過度な期待は禁物である。山積する課題を克服しながら、地産地消型エネルギーとして育成したい。

会員限定記事会員サービス詳細