朝晴れエッセー

ボンボン時計・7月6日

古い掛け時計が復活した。長いこと止まったままで放っておかれていたが、ふと、駅前の時計屋で直してもらえるのではないかと思い、持ち込んだところ、ちゃんと動くようになった。

店主に、「いつまで動いていましたか」と聞かれたが、私が嫁いできたときには、すでに息切れていたので、「30年以上は止まっていると思う」と答えた。修理が効くかどうかもわからず、また、高い修理代をかける程の値打ち品でもないので、駄目なら、やっと思い切って捨てられると思っていた。

数日して、直ったとの連絡があり、夫が急いで引き取りに行くと、店のご主人は、「安物」とは言わず、「物の無い時代のものです」と仰って「でも、とても良い音が出ます」とうれしそうに渡してくれたらしい。夫は、自分が小学校に入ったころからの時計だから多分、昭和30年代だとお伝えしたようである。

今、玄関に掛けた復活ボンボン時計は、時間がくるとその数だけ鳴る上に、30分ごとにギリギリギリ~ボンと1回打つ。なんとせわしないことか。しかも、結構大きな音で、ご近所にも聞こえているのではないかと思うほどである。昔はどこの家にも、こんな働き者の時計があったのだろうか。

子育てを終えて静かだったわが家に、突如として半時間ごとに「まだ頑張ってるよー」という声が響き渡り、そのたびに、物の無い時代の物の無い家の簡素なたたずまいの記憶がかすかに蘇る。

捨てなくて、よかった。

山崎 小夜 64 兵庫県西宮市