《オレが監督だ。文句があるならお前たちがやってみろ》ユニホームを脱ぐ真似(まね)をしてみせたブレイザー監督に、報道陣たちも反発した。気軽に雑談ができる日本人監督と違い、会見でしか言葉を交わさないブレイザー。意思疎通のなさが徐々に険悪なムードに変わっていく。そんな中で“事件”は起こった。
3月7日、午前中の守備練習で突然、岡田に「外野」の指示が出されたのだ。首をひねりながら外野の守備についた岡田がノックの打球を追う。「岡田、フライを捕るときは常に投げる体勢を考えて捕らなあかんぞ!」と安藤、島野両コーチの指示が飛ぶ。ノックはわずか10分で終わった。だが、ベンチに帰ってきた岡田の表情は複雑そのもの。
――外野でノックを受けろ-と監督に言われていたのか? の質問にも、首を横に振るだけ。“先発外し”に続く突然の“外野指令”。またしても追いやられる岡田…。報道陣たちのブレイザー監督への質問もつい言葉尻がきつくなった。
――岡田を外野に回すということは「一塁」がダメということか
「いや、それは違う。彼は三塁を守っていたし一塁守備も勘がいい。あとは場数さえ踏んでくれればと思っている」
――監督は数日前に“外野に岡田の割り込む余地はない”と言っていたではないか
「確かに言った。だが、3人(佐野、ラインバック、竹之内)を抜くつもりでやってほしい」
――するとヒルトンの「一塁」は決定したということか
「まだ、決めたわけじゃない」
報道陣の執拗(しつよう)な質問にブレイザー監督はうんざりした表情を見せた。
岡田VSヒルトン。この勝負、初めから岡田に勝ち目はなかった。小津社長の反対を押し切り、“心中”覚悟で取ったヒルトン。最初の構想では「二塁」だったが、二塁守備は圧倒的に中村勝や榊原の方がうまい。そこで「一塁」へ方向転換。「岡田との競争」とはいうものの、ブレイザー監督の腹は決まっている。それが分かるだけに、虎番記者たちの憤慨も大きくなるばかりだった。
――岡田の守備位置テストはいつまで続くのか
「開幕までならかまわないだろう。まだ1カ月もある」とブレイザー監督はうそぶいた。(敬称略)