G20「影の主役」演じた正恩氏、米中貿易摩擦に乗じ

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は6月29日に大阪で閉幕した主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の「影の主役」とささやかれた。サミットと前後した短い期間に中国と米国という2つの大国のトップを自国領内に招き入れ、世界の耳目を集めたからだ。貿易交渉が停滞する中で北朝鮮問題をカードに使おうとした米中トップの思惑を逆手に取り、したたかな外交戦を展開した。(ソウル 桜井紀雄)

 「この3日間で多くの驚くべきことが起きた。米国にとって素晴らしいことだ」。トランプ米大統領は30日、ツイッターでこう投稿した。南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で30日、金氏とともに米大統領として初めて北朝鮮側に越境したことが念頭にあるのは確かだ。

 G20サミットの焦点は貿易協議の再開を決めた29日の米中首脳会談だった。だが、トランプ氏は記者会見で「金氏と会うかもしれない。われわれはウマが合う」と冗舌に話し始め、メディアの関心を金氏との対面に誘導しようとした。

 トランプ氏の29日の対面提案に金氏は、側近に「興味深い」とする談話を出させるなど即座に対応し、米朝実務者が調整に動いた。

 布石はあった。北朝鮮外務省高官が27日の談話で「米国に連絡したければ、稼働している連絡チャンネルを使う」として、米朝の「仲介役」を気取る韓国政府を批判していた。トランプ氏の呼び掛けは首脳同士がいかに親密で、連絡ルートも万全かを誇示するまたとないチャンスで、金氏が逃すことはなかった。