【上州この人】月夜野クラフトビール社長・倉田善弘さん(75) 地元の名水で豊かな味わい - 産経ニュース

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月夜野クラフトビール社長・倉田善弘さん(75) 地元の名水で豊かな味わい

 みなかみ町に「月夜野(つきよの)」という風雅な名称の地域がある。平安時代の歌人がその地から見える月に感銘を受け「おお、よき月よのかな」と詠んだとの伝説が由来だ。その名を冠した「月夜野クラフトビール」の人気が高まっている。かつての「地ビール」が今、「クラフトビール」として注目を浴びブームも到来。社長の倉田善弘さん(75)は「今年こそ飛躍を遂げる」と意気込む。 (柳原一哉)

 月夜野クラフトビールはもともと、上越クリスタル硝子の観光施設「月夜野びーどろパーク」のレストランの目玉づくりが主眼だった。「地ビールと聞いて、新しい物好きの血が騒いだ」のを契機に生産に乗り出したが、当時は「ガラスのことくらいしか知らなかった」。

 月夜野町(現みなかみ町)と姉妹都市だったチェコのウヘルスキー・ブロッドのビール会社の技術協力を得て、第三セクター「月夜野クラフトビール」を設立。チェコ人技術者の指導を受け本格生産を始めた。

 しかし、意気込みと裏腹に持続的な需要に乏しく販売は一向に上向かなかった。「どこかで買ってきたビールを瓶詰めして売っているだけでは」。そんな誤解まで受けた。

 「年間の生産量が採算ラインの50キロリットルに届いたことは一度もなく、最悪の年で12キロリットル程度。よくて同25キロリットル程度…。正直、ビールは重荷なので何度も止めたいと思った」

 それでも、地元の名水を使った豊かな味わいと、大手メーカーにはない個性が必ずファンをつかむと信じる気持ちは変わらなかった。

 仕込み釜を修理しながら使い続け、販売増に向けた改善策としてペットボトルの採用を決断。ビール離れが進む若者らを念頭に「気軽に飲めるイメージ」づくりを狙い、投入すると手応えがあった。D51形蒸気機関車(デゴイチ)などのイメージをあしらったペットボトルの新商品「上越線ビール」も発売した。

 「折からのクラフトビールブームの追い風もあって販売が急伸した」

 平成30年度の年間生産量は41キロリットルと過去最高を記録。海外の有名ビール審査会で優秀な成績を収め、実力のほうもお墨付きを得た。

 令和元年度の生産量は50~55キロリットルを見込み、「創業以来の目標がようやく視野に入った。このまま伸びれば再来年は生産設備の増設も考えなければならない」と話す。

 「ガラスも手作り、ビールも手作り」。こだわりのアナログ思考で、いよいよ勝負をかける。

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【プロフィル】くらた・よしひろ

 昭和18年9月19日、東京都板橋区生まれ。明治大経営学部卒。平成5年、上越クリスタル硝子社長。同社は手作りガラスの製造・販売のほか、観光施設「月夜野びーどろパーク」も運営。27年から現職。月夜野ジュニアオーケストラ代表として地元の文化振興にも尽力する。