【商業捕鯨の灯 ふたたび】(上)IWC脱退の内幕 敗訴後ひそかに練られた4つのシナリオ(2/3ページ) - 産経ニュース

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商業捕鯨の灯 ふたたび

(上)IWC脱退の内幕 敗訴後ひそかに練られた4つのシナリオ

 ■秘密文書

 ICJ判決から約3週間後の2014年4月22日。自民党捕鯨議連の会合で、「秘」と注意書きのある日本政府作成の文書が配られた。今後、進む可能性のある4つの選択肢が記されていた。

 (1)「新たな調査計画による調査捕鯨」(2)「IWCを脱退して新たな国際機関を設立し調査・商業捕鯨」(3)「IWCを脱退して領海内に限定した商業捕鯨」(4)「IWCを脱退して商業捕鯨モラトリアムに留保を付して再加盟」。

 日本が1951(昭和26)年に加盟したIWCは、加盟国のクジラ乱獲などが原因で82年に商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を採択。当初は異議を申し立てた日本も最終的に受け入れ、クジラの生態を調べる調査捕鯨の道にかじを切った経緯がある。

 4つの選択肢にはそれぞれ政府が捉えるリスクも示された。(1)は「再び提訴される恐れ」、(2)は「国際機関設立に時間が必要」、(3)は「漁場・捕獲頭数が制限的」とあった。(4)は捕鯨国のアイスランドが採った方式だが、国際法違反を避けるためのこのやり方は反捕鯨国の反発が大きく、実現性が危惧された。

 どの道を歩んでもいばらの道で、国際的非難や訴訟リスクが高まる。日本政府は2つの基本方針を定めた。一つは、鯨類を重要な食料資源として科学的根拠に基づき持続的利用を図る。もう一つは、ICJ判決を踏まえた新たな調査捕鯨の実施に取り組む-と。

 IWC脱退は国際法上、脱退が効力を持つには1年後となる。残された選択肢は従来通り、調査捕鯨を続ける(1)しかなかった。

 2014年6月、安倍晋三首相は調査捕鯨の継続を宣言した。

 ■科学データも拒否

 日本側が捕鯨の継続にこだわるのは、モラトリアム以降、大型鯨類の資源が回復している科学データが日本の調査で集積されていたからだ。

 しかし、反捕鯨勢力はクジラを知能の高い特別な動物と捉え、一切捕獲してはならないと主張していた。IWC日本政府代表の森下丈二・東京海洋大教授は「モラトリアムの意味がいつしか独り歩きし、商業捕鯨の『永久停止』と理解されるようになった。科学的に持続可能な捕鯨が可能であっても、IWCで再開につながる提案は一切、拒否されてしまう」と語る。